第7章 【名探偵コナン✖︎呪術廻戦】
「……お待たせしました。ハムサンドとアイスコーヒーです」
目の前に置かれた皿に、耳に心地よく響く爽やかな声。
「……ありがとうございます」
🌸は視線を上げすぎないよう、細心の注意を払って礼を言った。
目の前にいるのは、褐色の肌に金髪が映える男、安室透。
🌸の前世での最推しであり、この世界の「裏」を知る超重要人物だ。
(今日も顔面が国宝級……。まつ毛長いな……。あとその袖の捲り具合、最高です……)
心の中ではスタンディングオベーションが起きているが、表面上は「ちょっと大人しい常連客」を必死に演じる。
ここは米花町。
一歩外に出れば、誰かが毒を盛られ、誰かが密室で亡くなり、少年探偵が麻酔銃を構える魔境だ。
「……あの、お客様?」
「は、はい! なんでしょうか!」
つい食い気味に返事をしてしまい、安室が少し目を見開いてからふわりと微笑んだ。
「いえ、いつも美味しそうに食べてくださるので。作りがいがあるな、と思いまして」
「そ、それはもう、世界一美味しいので……! 毎日の糧にしてます」
「ははっ、大袈裟ですよ。でも、嬉しいです。ゆっくりしていってくださいね」
安室は軽く会釈してカウンターへと戻っていく。
……危ない。尊さで心停止するところだった。
(……はぁぁ……今日も生きててよかった……)
小さく息を吐き、ハムサンドを一口。
相変わらず完璧な味だ。
本当なら「降谷さん! 身体に気をつけて!」とか「梓さんと仲良くね!」とか言いたいことは山ほどある。
けれど、下手に物語の核心に触れれば、🌸はポアロの客から「重要参考人」か「消すべき対象」に昇格してしまう。
(推しは遠くで眺めるもの。そして、事件には絶対に関わらない。これがこの町で生き残る鉄則……)
心に誓いながら、🌸は安室さんの背中をそっと目に焼き付けていると、店のドアが開いてカウベルが鳴る。
「安室さーん、こんにちはー!」
聞き覚えがありすぎる、わざとらしい子供の声。
(……来た。コナンくん『死神』だ)