第9章 壊れていく心情
上崎中との試合が始まった。
大輝は、さっき話していた相手と目を合わせて笑っていて、本当に楽しそうに見えた。
……でも。
途中から、様子が変わった。
てつくんと、いつもやっている拳を交わす仕草がない。
視線も、どこか合わない。
嫌な予感が、背中を撫でる。
試合は、帝光中学校の圧勝で終わった。
私はドリンクとタオルを持って、大輝のもとへ行く。
無言で受け取られ、そのまま控え室へ。
「青峰くん!」
呼び止める声。
「……うるせぇ。一人にしてくれ」
「さっちゃん。私、大輝のところ行ってくる」
そう言って、走り出した。
探し回って、プールサイドで見つけた。
タオルで顔を覆っているけど、間違いない。
私は、後ろから抱きついた。
「……大輝」
「……なんだよ」
声が、かすれている。
「もう、一人にしてくれよ」
その声に、胸が締めつけられた。
……泣いてる。
「分かるよ」
私は、静かに言った。
「私も、女ってだけで男の子と一緒にできなくて、小学校のチームで、化け物扱いされたことがあった」
「……だから、私も大輝と同じだよ」
大輝の体が、少しだけ震えた。
それから、強く抱き返される。
「……俺を理解してくれるのは」
低く、震える声。
「雫しか、いねぇ」
その言葉が、胸に重く落ちた。
嬉しいはずなのに。
――それは、あまりにも孤独な言葉だった。