第4章 惚れたきっかけ
帝光中に戻ってからも、頭の中は大輝のことでいっぱいだった。
もし、簡単にゾーンに入れるようになったら。
それは、あまりにも危険だ。
体が出来ていない状態でゾーンに入れば、最悪――将来、バスケが出来なくなる。
あんなに純粋にバスケを愛している大輝に、そんな未来を迎えてほしくない。
教室で一人、考え込んでいると、征くんがやってきた。
「茶郷、お疲れ様。練習試合はどうだった?」
今すぐ伝えなきゃ。
「征くん……ゾーンって、知ってる?」
「才能があり、練習を重ねた選手が辿り着く領域だろう」
「そう。小学生女子バスケットボール全日本大会の決勝で、私はゾーンに入った」
征くんは、目を見開いた。
「大輝にも素質がある。……いや、キセキの世代全員にある」
「でも、ゾーンに一度入った私が言う。中学生でそれを扱うのは――危険すぎる」
「どういうことだ?」
「優勝した後、確かにバスケをつまらないと思った。でも、それだけじゃない」
「ゾーンに入った代償で、関節が全部悲鳴を上げて、体が一切動かなくなった」
「……成長途中の体で、限界以上の力を出すと、耐えきれない、ということか」
察しが早くて助かる。
「そう。私は女子だし、最後の2分だけだったから関節が痛む程度で済んだ」
「でも男子は違う。今のキセキの世代が、少しでもゾーンに踏み込めば――一生バスケが出来なくなる可能性もある」
征くんは、静かに頷いた。
「……分かった。キセキの世代には、改めて話そう」