第3章 第二話:守る
「あ……ああ……イヤ……」
彼女は怯えきった仕草であとずさる。かすかなささやきが、色の変わった唇から漏れる。
「しぬの………イヤ……」
「え……?」
ディオは彼女の肩に触れようとした。そのとき、少女ははじかれたように立ち上がった。
「いやぁあぁぁっ!」
彼女はディオから逃げるように水を蹴立てて走り出す。
「なっ?お、おい、ちょっと待て!一体なにを……!?」
少女は水に足がを取られて倒れるが、よろよろと立ち上がると待たせ逃げ出す。
「いやっ……死ぬのイヤ………!こわいっ!」
「いや、だからっ待てっ!だったら行くな!」
彼女の向かう先は先程ようやく逃れた海だ。ディオはしかたなく少女をつかまえようとする。また溺れられては困る。少女はとらえられると必死に身をよじり、叫んだ。
「死ぬのぉっ!撃たれたら死ぬの!」
こいつは?ーーーディオはハッとした。気を抜いたはずみで、少女が振り回した肘がまともに顔に入る。目の前が一瞬、白くなり、口の中に血の味が広がる。それは、母を灼いた光がはじけた瞬間に似ていた。
「ダメよ!それは、ダメ……」
少女は浅瀬をよろよろと歩きながらまた倒れた
「こわい……死ぬのはこわいーっ!」
ディオはあわてて彼女の体を抱き上げた。