第3章 第二話:守る
少女はパニックに陥っているのか、めちゃくちゃに手を振り回し、ディオにしがみつこうとする。女の子とは思えない強い力でしがみつかれ今度は逆にディオの方が水に引きずり込まれそうになる。
「くそっ!落ち着けっ!」
塩辛い水を舌に感じながらも懸命に話しかけるが、少女は聞こうとしない。その爪がディオの頬引っ掻いた。このままでは埒が明かない。
ディオはいったん手を離し、ふたたび水に潜った。そして、ばしゃばしゃともがく少女の背後に回り込み、今度は身動きぐできないようにしっかりと抱きかかえ、そのまま水面に持ち上げる。ようやくおとなしくなった少女を抱いてディオは何とか浅瀬までたどり着いた。
ディオに支えられ、少女はよろめきながら、ときおり咳き込んでいはり。岩場に上がろうにも足がもつれ浅瀬に座り込んでしまう。疲れ切って、しばらくは声も出ない。
急に引っ掻かれた頬がひりひりと痛みはじめ、ディオは怒りにまかせ怒鳴りつけた。
「死ぬ気かっ、お前はっ!?」
少女はひくっと縮み上がる。
「泳げもしない奴が、あんな所に!なにをぼーっとして……」
言いながらディオは少女の様子がおかしいのに気が付き、目を上げる。少女は唇まで真っ青になり、がくがくと身を震わせていた。