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バディコンプレックスによる強化人間

第3章 第二話:守る


青葉といざこざを起こしたディオは買い出しを放り出し、波の打ち寄せる崖の突端に来た。
海の中に杭を打ち込んだような、奇岩のつらなる眺めのいい場所だ。海風が汗ばんだ髪の間を吹きに抜けていくのが気持ちがいい…。
海鳥の声が遠くに聞こえる。
今は兎に角父の事を忘れてしまいたかった…
波の音に混じって、かすかな歌声が耳に届いたディオはそちらに目をやる。女の子が一人、歌いながら踊っていた。やわらかそうな金髪と、ドレスの白い裾が風に煽られ、はためく。
少し離れた崖の上で、すんなりした腕をさし上げ、少女はさも楽しげに、くるりとくるりと舞う。でたらめに踏んでいるステップは、それでも生きる喜びに満ちて美しかった。ディオはしばし、魅せられたように彼女に見入った。
風が少し強まり、反射的に目を瞑る。

「あっ……」

かすかな叫び声がし、ディオは閉じていた目を開いた…。わずかの間にさっきの崖の上から、少女の姿が消えている。ーーーと、下方で水音がした。

「…‥……なっ!?」

まさか、と思いつつ、ディオは走り出す。少女が先程いた場所へ、岩をたどって向かいながら、ディオは首を伸ばして下を覗き込んだ。崖の突端にたどり着けば、打ち寄せる波の合間に金の頭が見える。

「なー…っ!嘘だろ!?落ちたのか!?」

水の中で少女は必死にもがくが、打ち寄せる波がその頭にかぶさる。
そして、それきり浮かんでこない。

「…っっ泳げないのかっ!?」

崖の高さは十メートルほどか、ディオは急いで上着を脱ぎ捨て、迷うことなく突端から身を躍らせた…。一拍おいて、海面に体を打つ。ディオの身体がいったん浮き上がり、最後に少女の頭が見えた方へ懸命に抜き手を切る。波間に沈んでいく少女の姿が見えた。ディオはそのあとを追い、ぐいっと水をかき分ける。その手が少女の体を探り当てその体を抱きかかえ、水面をめざした。暴れる少女の手足が顔や足に当たるが、その痛みさえ感じる余裕がない。
ほどなく、二人は海上に浮かび上がった。
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