第1章 五条 悟の場合…※R18
「茉奈~??生きてる~??」
一人暮らしをしている茉奈はガチャリと開いたリビング扉に視線を向ける。
白い髪に黒いアイマスクの男の手にはコンビニの袋を下げており、もう片方の手に持っていた鍵とともに無造作にセンターテーブルに置いた。
「今日は生徒の引率じゃなかったです…?」
喉を使うと同時にこみあげてくる咳に体力を奪われ過ぎたのだろうか、ベッドから体を起こす力が出ない茉奈は弱々しく問いかける。その問いに男はそうだよ、と返答したが窓から射しこむ日光の高さ的に学校は既に始まっている時間だよね?と茉奈は心中で疑問を抱く。
「悠仁達1年生’sは昼休憩中。ということで僕はこっちの面倒を見に来たってワケ」
東京都立呪術高等専門学校、通称呪術高専。人間の負の感情から生まれた化け物や呪霊を払う為に、呪術師という能力者を育てる学校。茉奈はその学校のOGであり今日は仕事の予定だった。まさか風邪を引くとは…。
「まだ熱はありそうだね~。とりあえず水分取って寝るのみかな」
枕もとの空のペットボトルを持ち上げプラプラと振りながら、新しい飲み物と薬を眼前に見せてくる。アイマスクをしていても“全て見えている”ように話すのは正しく“すべてが見えている”のだ、呪術界の御三家と名高い五条家に六眼を持って生まれた男、五条悟は学生時代は随分と軽薄な先輩のイメージだったが、今や3人の生徒を受け持つ先生となっている。
呪術界での最上位階級、特級の呪術師であり、同特級の乙骨を育てた悟は高専での伝説だ。それが今は3級に上がるか上がらないかの自分の部屋に居る。
「今日茉奈が行く予定だった仕事は社会見学ってことで1年’sを連れて行くことになったから、大人しく寝てるよ~に」
「…五条先輩に任務要請が行ったんですか?…スミマセン」
「僕に3級の要請は来るはずないでしょ。学長から茉奈が引き受ける予定だったって聞いたから引き受けただけ」
私が引き受ける予定だったから?
何気ない悟の言葉にドキリとする。高専は特殊な学校が故に在学時も全校生徒数は10人も居なかったとはいえ、自分の事を覚えていてくれるだけでもちょっと嬉しかったりする。