第3章 脹相の場合
「おい茉奈」
「…?」
背後から脹相に名を呼ばれた茉奈は、振り返りつつ残党の呪霊を殴り飛ばした。
相伝の術式などを受け継がなかった茉奈は呪術高専出身の人間に偶々出会い入学したはいいが、先輩や後輩のように目立った術式が顕現しなかった。
呪力量はそこそこの為、武闘派寄りの戦闘型の術師となった。
「なんですか脹相さん?」
脹相の元に戻る間、足元に転がる蟲の息の呪霊を踏みつぶす茉奈は表情の一つも変えない。普通の人間が見れば顔を歪めて見るであろう光景を脹相とともに見ていた人物は「派手にやったな~」と額に手を当て茉奈の背後を見通した。
武闘派寄り・戦闘型の師と仰ぐ虎杖悠仁は後輩の活躍に目を輝かせる。
「すげぇな!低級呪霊なら一人でももういけるんじゃね!?」
「虎杖先輩!!まだ素早く呪力の移動が難しくて…」
「茉奈」
真面目に返事をしていた茉奈は再び脹相に名を呼ばれハッとする。いつもそうだ、師である虎杖を前にするとついつい意識が集中してしまう。
虎杖の隣に立つ脹相に視線を向けると些か不機嫌そうな表情で立ち、茉奈の顔をじっと見つめて来た。
「なにかついてます?血とか?」
顔をぺたぺたと触れながら首を傾げた茉奈だったが、眉間のシワを更に深くした脹相に突然ガバリと肩に担がれ「へ?」と声が漏れた。茉奈同様目を丸くして驚いている虎杖の様子から察するに師にとっても脹相の行動は珍しいらしいようだ。
結局、脹相が下ろしてくれることはなく高専からは然程遠くない、小高い場所にあった公園での任務だったので担がれたまま寮へと帰還することになったのだった。
部屋の前でそっと下ろされた茉奈がお礼を述べると、脹相は虎杖へと視線を向け「風邪には何が効く?」と突拍子も無い質問を投げかける。そんな行動もいつも通りなのか虎杖は顎に手を当てながら看病に良くあるものをあげつらっていく。