第2章 性欲か生欲か愛欲か
餅に押し込まれた餡子になった気分…東京の電車は人が多すぎる。
やっと目的の駅に着き、キャリーケースを引いてホームに降り立った。
恐らくここがアキの家の最寄り駅。
住所は知っている。
だが、来るのは初めて。
死と隣り合わせの仕事をしているアキを連れ戻すと両親と約束して、悠久の大地を飛び出した。
「アキ…これからはずっと一緒にいよう」
毎年、決まった日に白銀の大地を踏み締めるアキ。
私も欠かさず通った。
アキに会う為、あの日を忘れない為。
東京という箱庭から溢れんばかりの人波。
この波に攫われていった最愛の人を求めて、歩を進める。
いつだったか…何度目かのアキの家族の命日、一度だけアキは私を求めた。
暴かれる痛みに耐えて噛み締めた、幸せ。
だがあれは――たった一度の"過ち"。
家族になると決めた私は、もう間違えない。
あの過去も想いも…あの雪の下に閉じ込めたから。