第4章 燻る何か
手首を掴んだまま肘に手を添えて、少し目を伏せたアキを見つめながら、内側に隠れた腕の白い部分へと唇を寄せる。
ちゅー…っと高い音を発しながら、アキの腕を吸った。
ゆっくり唇を離し、目線を腕に移す。
湿った腕は真っ赤な跡を、白の中で咲かせていた。
「ごめっ、濃く……」
「結那、お前…俺を__」
別の言葉をお互いに途中で止めて、ただ静かに求め合うキスをした。
言ったらいけない。
言わせてもらえない。
言ったら、アキが苦しむの。
でも、言わないと…私が苦しいの。
私たちの答えは――幸せはどこにあるの…。
答えのない関係を続けることが、私たちの幸せなのだろうか。
アキは…何を求めているの?
みんなと生きる未来じゃないの?
今のアキが、復讐よりも温かさを求めていることを、私は気付いていた。
触れた唇は離れ、額を合わせてアキを見つめる。
アキは、見つめ返さなかった。
「ガキん頃、結那を自分のものにしたかった時期があった。
出来たのは、一度だけ」
心臓がトクンッと跳ねる。
声だけでは感情が読めず、その瞳を見つめたかったのに、睫毛だけが揺れて、存在を主張する。
私がつけた跡を指でなぞり、息を零した。
「ガキの頃…昔の話だ。
今は、マキマさんがいる」
笑うアキが酷く寂しげに見えた。
ほんの少し、違和感が芽生え始める。
でも、その違和感がなんなのか、わからなかった。
「結那…」
やっと交わった視線はアキの瞼が遮断する。
震えた唇が柔らかく口付け、煙草を吸うからと、ベランダを追い出された。
私は――今のアキの中に、何か残せただろうか。