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Feline Journey( ONE PIECE )

第1章  🐾




夕暮れの港町は、潮の塩気と酒の甘い香りが絡み合い、どこか気だるく、甘美な空気に包まれていた。
石畳の通りを歩く人々の足音が、波の音と混じり合う。
その一角に、古びた木造の酒屋があった。
扉の上に揺れるランタンの灯りが、赤く柔らかく通りを照らす。


「お姉ちゃん! 酒のおかわり〜!」


カウンターの向こうで、赤ら顔の男が陽気に手を振る。
皺の寄った笑顔に、酒の勢いが乗っている。


「はーい、少々お待ちくださーい」


はにこやかに返事をし、手慣れた動作で樽から麦酒を注いだ。
泡が溢れないようグラスを傾け、静かに息を吐く。
その仕草はこの店で磨き上げられたものだった。
柔らかな笑顔の裏で、瞳だけが少し冷たく、遠くを見ている。

店内は賑やかだった。
船乗りたちの笑い声、グラスのぶつかる音、誰かが歌い出す下手くそな歌。
そんな喧騒の中で、会話が自然と飛び交う。


「また海賊が来てるそうだよ。危害を加えないなら大歓迎だけどなぁ。」
「まぁ、ヤバい奴らはネコガミ様がやってくれるでしょ。」
「確かにそうだな。ハハハ」


はその言葉を聞き流すように、テーブルへ歩み寄った。


「お待たせしましたー! 麦酒と、これ!サービスね。」


軽やかに杯を置き、小皿に簡単なつまみを添える。
客たちは歓声を上げ、彼女に礼を言った。





...ネコガミ様。



この街を守っていると噂される、姿を見せない“守り神”。
凶悪な海賊だけを狙い、確実に仕留める存在。
その存在を見た者はいない。


だが、海軍基地の門前に一匹の黒猫が現れる朝。
無言で歩き出す猫に海兵が付いていくと、そこには捕らえられたか、あるいは既に息絶えた懸賞金付きの海賊たちが転がっている。


猫は懸賞金を受け取り、何事もなかったかのように去る。
それだけが、手がかり。


だから人々は、畏敬と少しの恐怖を込めて
――ネコガミ様と呼ぶようになった。
この噂が広まり始めたのは、ほんの数年前からだ。



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