第19章 いつか、また
「恵くん……!!」
私の背後。そこに佇んでいたのは、深い紺色のシックな浴衣に身を包んだ恵くんだった。
普段の制服やラフな私服姿とは全く違う、どこか色気があって大人びた和装姿に、私は堪らず両手で口元を覆って、胸の高鳴りのままに感銘を受けてしまった。
「かっこいい……!すっごく、すっっごく似合ってる!!」
「……そりゃどーも」
湧き上がる感動のまま素直に言葉にして伝えると、恵くんは目線だけを私から逸らし、バツが悪そうにいつものへの字口を少し尖らせる。
「照れてんな」
「ですね」
背後から聞こえてくる、真希さんと野薔薇ちゃんの楽しげな野次を全力で聞こえないフリをして。
私は帯の隙間に差し込んでいた携帯を素早く取り出した。
「恵くん!いっ、今のうちに、写真 撮っていい?」
「……ダメだ」
「ええっ、なんで!?私のことも、後で撮っていいから……!!」
「……………」
そう言って両手を組んでお願いすれば、恵くんは数十秒考えた後、観念したように頷いて了承してくれた。
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恵くんの写真をひとしきり撮り終え、今度は私が撮られる番という空気が流れ始めた時。
「お疲れサマンサー!!!おっ、全員揃ってるねぇ!いやあ、優秀優秀!!」
集合時間から約十分ほど遅れて、五条さんがいつも通りの姿で正門へと姿を現した。
その姿を見るなり、それまで真希さんと談笑していた野薔薇ちゃんが、待ってましたと言わんばかりにズカズカと五条さんの元へと歩み寄っていく。
「遅い!!この十分で若干 着崩れしたんだけど!」
「え〜?そんなに着付け甘くしたの?」
「うるさいわね!責任取って浅草までのタクシー代出して!!」
「それは別にいいけど」
野薔薇ちゃんの怒涛の文句を軽くいなし、タクシー代の要求すらもあっさりと受け入れた五条さんは、いつものズボンのポケットから財布を取り出した。
ほんの少しだけ、五条さんの浴衣姿を見られるかも、と期待していたから、いつも通りの服なのはちょっとだけ残念。
でも、初めて行くお祭りに 大好きな恵くんと、みんなと、五条さんと一緒に行ける。
ただそれだけで、私の心はこれ以上ないくらいの幸せで塗り替えられていった。