第19章 いつか、また
「……ん、……っふ、ぁ」
流されるままに愛されて、それが酷く心地よくて。
恵くんの口から愛の言葉が聞けなくたって、行動ひとつで、私はいつだって満足感で満たされる。
「……、ナマエ、」
ようやく唇を開放されたあと、掠れた声音で名前を呼ばれれば、期待と緊張で自分の喉がこくりと鳴るのが分かった。
これ以上進めば、一時間どころじゃ絶対に片付かない。……それでも。
「………恵くん」
応えるように熱い吐息の中で名前を呼べば、もう一度、優しく唇が重なった。
このまま全部流されて、集合時間に遅れてみんなに怒られたって、私はきっと後悔しない。
そんな熱情に完全に呑まれてしまった、その瞬間。
──── prrrr
静まり返った部屋に、私の携帯が大音量で一件の着信を知らせた。
「………出ねぇのか」
いつまで経っても鳴り止む気配のない着信音に、恵くんが痺れを切らしたように問いかけてくる。
その瞳には、邪魔をされたことへの不機嫌さが分かりやすく滲んでいた。
「………出、ます」
離れ難いのは、きっとお互い様。
そう気持ちを押し殺して恵くんの腕の中から逃れ、ベッドの下のバッグから携帯を取り出してディスプレイを確認する。
……着信は、野薔薇ちゃんからのものだった。
「もしも───……」
『アンタ今どこ』
応答の言葉を吐き切る前に、スピーカー越しに野薔薇ちゃんの鋭い声が鼓膜を突いた。
「え……っ、あ…、めっ、めぐみくんの部屋……だけど、」
『だと思った。今からそっち向かう。ヘンな事してたらタダじゃ置かないから』
「ハイ……」
気圧されたまま、おずおずと答えると、野薔薇ちゃんは続々と言葉を重ねる。
有無を言わさぬ空気に押し負けて返事をすれば、直ぐにプツンと通話が途切れ、ツーツーという機械音が部屋の中に響いた。