第18章 呪術甲子園
「苧環がそんな頑ななのも珍しいな。何の話ししてたの」
ワシワシと髪を拭きながら、虎杖くんが問いかける。
それに対して「今日この子がベンチだった理由」と簡単に返事をした野薔薇ちゃんは、少し緩めていた私へのお仕置きを再開した。
「……そういうことか」
再び廊下に私の絶叫が響き始めた時、一人で納得したように恵くんが深く頷いた。
「たっ、助けて恵くん……!!お願い……!!」
「わかった」
そんな恵くんに涙目で必死の救いを乞えば、今度はあっさりと引き受けてくれる。
やっと解放される。そう思ったのに。
「釘崎。コイツは昔から、球技という球技が壊滅的に苦手だ」
「あ゛っ!!!ちょっ、」
安心したのも束の間。
なんと味方だと信じていた恵くんは、私の最高機密を、信じられないくらいあっさり吐いてしまった。
「へぇ〜〜〜〜???????」
「もう!!!恵くんのバカ!!!」
野薔薇ちゃんのゲンコツ攻めからは開放されたものの、案の定、彼女は私の弱点を見つけてニヤニヤと喜んでいる。
「べっ、別に、苦手じゃないよ?本気出せば野球もバスケも、何だってできるし!」
「術式使ったら、な」
「恵くん!!!!補足しないで!!」
言い訳がましくそう言ってみても、幼馴染である恵くんに横槍を入れられてしまえば、私に逃げ場なんてない。
とはいえ、ここでハッキリ認めてしまうのも嫌で頭を悩ませていた時。
「でも釘崎も蛙苦手っつってたじゃん。誰にでも苦手なモンくらいあんだろ〜?」
と、優しい優しい虎杖くんが助け舟を出してくれた。
「バカが。球技音痴と蛙嫌いは別モンだろ」
「そう?」
露骨に渋い顔をしてそう言い捨てた野薔薇ちゃん。
しかし、敵が自ら口にした最大の弱点を見逃してあげるほど、私は優しい呪術師ではない。
「恵くん!!蝦蟇、出して!!」
「出さねぇよ、バカ」
手で蝦蟇の影絵の型を組み、必死の形相で恵くんを見上げて懇願した。
けれど、すかさず恵くんの手刀がポン、と頭頂に軽く振り下ろされ、私のささやかな復讐心は一瞬で塵となって消え去った。