第18章 呪術甲子園
「……そ」
思わず俯いてしまった私の様子を見た野薔薇ちゃんは、小さな声でそう言って、呆れたように息を吐いた。
そして、野薔薇ちゃんは立ち止まった私の目前へとゆっくり歩み寄り────。
「い゛っっっ、痛い!!!野薔薇ちゃん、コメカミぐりぐりしないで!!」
「ベンチだった本当の理由を洗いざらい吐くまで、絶対に止めないわよ!!」
「嫌ーーーッ!!だ、誰か、誰か助けて……っ!!」
野薔薇ちゃんの容赦のないゲンコツが私の両コメカミを左右から挟み込み、高専の廊下に私の絶叫が木霊する。
両手両足をバタつかせて抵抗しようとしたものの、動けば動くほどコメカミへの刺激が倍増して、全身の力が完全に抜けてしまう。
もう、このまま球技音痴なことを白状するしかないのか。そう絶望に涙目を浮かべた、その時だった。
「廊下でギャーギャーうるせぇ。今何時だと思ってんだ、お前ら」
「んあ?まだ19時前だぞ?」
「お前には聞いてねぇよ、虎杖」
背後から聞こえてきた、聞き馴染みがありすぎる二つの声音に、私は野薔薇ちゃんのゲンコツに挟まれたまま無理やり視線を向ける。
そこには怖いくらいに顔を顰めた恵くんと、濡れた髪を首にかけたスポーツタオルでガシガシと拭いている虎杖くんが立っていた。
「恵くん……っ、たすけて…!!っ野薔薇ちゃんが、私のこと、いじめるの……!!」
助けを乞う間も、野薔薇ちゃんの指の関節が容赦なく私のコメカミへとめり込んできて、じわりと視界が涙で歪む。
「釘崎」
「嫌よ。私に隠し事なんて、生意気な事するんだもの」
せっかく恵くんが助け舟を出してくれたのに、野薔薇ちゃんの言葉を聞いた途端、その視線が私へと向けられた。
「ナマエ、早く吐け」
「やだ!!!」
「はぁ……」
説得を試みられたけれど、ここで一級術師(仮)としてのプライドを捨てるわけにはいかず、私は視線を逸らし、即答で断固拒否の姿勢を貫いてみせる。
すると恵くんは深い深い溜息を吐き、片手で顔を覆う形で頭を抱えてしまった。