第18章 呪術甲子園
その後、3番バッターのパンダ先輩はヒットで出塁。
そして4番。真希さんの打球は伸び、場外ホームラン───と思いきや、箒で宙に浮かんだ京都校の西宮先輩のミットがそれを掴み取った。
「うわぁぁぁあ!!!せっっこ!」
「おかか!!!」
「釘崎戻れー」
京都校は人数不足により、一人だけ術式の使用が許可されていたらしい。
事前に説明がなかったことに皆不満を抱えていたけれど、東京校への説明役が五条さんだったことに気づいた皆はただ唇を噛み、ノリノリで球審をする五条さんを睨んでいた。
真希さんの打席はアウト。続けて、塁に戻りきれなかった野薔薇ちゃんも刺されてダブルプレーとなり、あっという間に攻守反転。
二回表、京都校のバッターボックスには東堂さんが立ち、キャッチャーの虎杖くんと何やら言葉を交わしていた。
東堂さん。恵くんをアウトにした張本人。交流会一日目の「妥協で伏黒と一緒に居るんだろう」という失礼極まりない発言も、私はまだ許していない。
(………バチ当たっちゃえ)
東堂さんなんて、……そうだ、小指をタンスにぶつけたりしちゃえばいいんだ。
───そんな私の願いに呼応したかのように。
「ブッッッ!!」
「とっ、東堂ーー!!しっかりしろ!!!」
凄まじい衝撃音と共に、真希さんの容赦のない豪速球が東堂さんの顔面にクリーンヒット。
そして東堂さんは放心顔のまま、ドサリとその場に倒れ込んだ。
(………天罰)
心の中で親指を立てていると、マウンドにいる東京校の面々、さらには身内であるはずの京都校のベンチからも、「ナイスピッチ」「ナイッピー」との惜しみない賛辞がピッチャーの真希さんへと投げかけられていた。
「真希さーん!ナイスピッチでーーす!!」
周囲の空気に釣られて私も大声で叫んだ後、ふと冷静になって気づく。
(……もしかして東堂さん、私以外からも苦手に思われているのでは…?)
顔面へのデッドボール。
普通なら不憫に思い、誰もが真っ青になって駆け寄る場面のはずなのに。
介抱してくれている虎杖くんを除いて誰一人として彼を心配していないというのは、さすがに少しだけ可哀想に───…いや、やっぱりあの性格と悪癖を思えば、当然の摂理だ。
やはり真希さんの投球は完璧だったということにして、私はもう一度だけ心の中で親指を立てた。