第15章 成就の証※
けれど、このままだと脱水症状一歩手前になってしまう。
それに、恵くんが起きた時に差し出せる水の用意くらいはしておきたい。
……どうしたものか。そう考え始めたその時。
「ナマエ!! 今日こそ銀座のカフェに行くわよ!! 起きなさい!!」
けたたましいノック音と共に部屋の外から響いたのは、大好きなクラスメイトの叫び声だった。
最近の日常のひとつ。
平日はホームルームが始まる前に野薔薇ちゃんが声を掛けに来てくれて、休日はこうしてお出掛けの誘いをしてくれる。
塞ぎ込んだ私の心を溶かそうとしてくれているのが痛いほど伝わっきて、それが嬉しい反面、どうしても這い上がれない自分に嫌気が差し、野薔薇ちゃんには申し訳なさが募っていた。
「ちょっと。この土日は学生はオフって裏取ってんのよ!!交流会前に、真希さんも誘って祝勝会よ!!!」
「…………」
祝勝会って勝ってからするものじゃなかったっけ。
ベッドの上でそんなことを考えながら、野薔薇ちゃんに返す言葉を考えた。
しかし、こんなにも掠れきった喉では、まともな声なんて出せるはずもない。
(………這っていけば、まだマシかも)
大きな声を出せないならば、直接会って伝えればいい。
あわよくば水を買ってきてもらおう……なんて調子いいことを考えながら、私はベッドから崩れ落ちるように降り、重い下半身を引きずって扉へと這い進んだ。
「はぁ……今日も出てこないわけ?アンタ、学長に気に入られてるからって公欠しすぎ。……私、毎日教室で待ってるんだけ………どッ?!」
「のばらちゃ……、ごめ……っ」
初めて、野薔薇ちゃんの隠しきれない本心が零れた瞬間。私は堪らず鍵を開け、身体を支えるようにして扉を押し開いた。
本当はもう少し言葉の続きを聞いていたかったけれど、それ以上に、私も野薔薇ちゃんに会いたかったから。
「………………中に伏黒居んだろ」
「え゛っ」
「入るわよ」
「まっ、待って……!野薔薇ちゃん……っ」
私の姿を瞳に捉えた途端、野薔薇ちゃんは冷徹に目を据わらせ、強引に扉を開いて室内へズカズカと踏み込んできた。
「オイ、伏黒ォ」
「……ッ、……は?」
そして深い眠りに沈んだ恵くんの頭にゲンコツを落として、驚いて起き上がった恵くんを鬼の形相で見下ろした。