第15章 成就の証※
虎杖が死んでから、ナマエが授業にも訓練にも、一切顔を出さなくなった。
このままでは単位が危ないという学長の判断で座学の代わりに任務を詰め込み、公欠扱いにして現場へ回されているらしいが、俺にとってはありがた迷惑な話だ。
最初は返ってきていた連絡も、一ヶ月を過ぎた頃からはパッタリと返ってこなくなった。
既に季節は夏へと移ろい、蝉のなく声と照りつける太陽の暑さのせいで釘崎の機嫌は悪い。
……もっとも、それだけが原因ではないだろうが。
「伏黒、暑い。仰げ」
「なんでだよ」
任務帰り。
苛立ちを隠そうともしない釘崎に命令口調で告げられたが、俺は素っ気ない言葉だけを返した。
「……ねぇ、あの子から返事来た?」
「………来てたらとっくに言ってる」
俺の返答に「やっぱそうよね」と呟いた釘崎は、車のシートに深く身を預け、わざとらしく大きなため息をつく。
「……呪術師が死ぬのなんて、珍しいことでもないでしょ。あのバカ」
「………」
そう言いつつも、釘崎も多少は傷心していたのを知っている。
会って二週間そこらで、と強がってはいたが、本心はそうでもないのだろう。
「………ナマエも俺と同じで、距離の近い人間が死んだのは初めてなんだよ」
「だからって、私たちを避けることないでしょ」
「…それは同感」
ため息を吐いた釘崎は体制はそのままに、スマホから俺へと目線を変えた。
「アンタでもコンタクト取れないんじゃ、私はまだまだ難しそうね」
釘崎は「命令。早く何とかしなさい」と付け加えた後、俺に人差し指を突きつけ、不機嫌そうに眉を顰めた。
俺だって、出来るものならなんとかしたい。
ナマエの顔が見たい。声を聞きたい。
そしてあわよくば、その頭の中に残る虎杖の残滓を、俺の存在で塗りつぶしたい。
そんな不純な気持ちを抱きながら、毎晩のようにナマエの部屋の前に足を運んでいる。
けれど、その扉の奥から声が返ってくることも、中に招き入れられることも、一度としてなかった。