第14章 『いいこ』の作り方
伊地知からの緊急連絡を受け、出張先の任務を強引に詰めて高専へと戻った。
自分でも珍しく焦っていたと思う。
そのせいで周辺インフラの破壊規模が想定を超え、事後処理に膨大な時間がかかると学長に怒鳴られたが、今の僕には知ったことじゃない。
────僕は、誰もが認める、生徒思いのグッドルッキングガイだ。
受け持ちの生徒が"殺されて"、冷静で居られるはずがない。
「僕はさ、性格悪いんだよね」
「知ってます」
「伊地知、あとでマジビンタ」
「マ……マジビンタ?」
解剖室の中。
引率した伊地知をひとしきり詰めた後、悠仁の遺体解剖の準備を淡々と進める硝子を眺めながら、僕は伊地知に"夢"について語った。
僕の不在を狙い、特級を利用して体良く悠仁を始末しようとした。
この一件からわかる通り、上層部は呪術界の魔窟。
そんなクソ呪術界に変革を起こすために、僕は教育を選んだ。
──────強く、聡い仲間を育てるために。
「皆優秀だよ。特に三年秤、二年乙骨。彼らは僕に並ぶ術師になる」
悠仁も、その一人だった。
「ちょっと君たち。もう始めるけど、そこで見てるつもりか?」
「「……………」」
悠仁が横たわるストレッチャーの傍らで、硝子がゴム手袋をはめながら問いかけてくる。
────が、その背後。
「おわっ!!フルチンじゃん!」
ぬるりと起き上がったのは、遺体だったはずの悠仁だった。
「ごっごご五条さん!!!いいいいい生きてっ、」
「伊地知うるさい」
そう言いつつも、目の前で起きたあまりの奇跡に、さすがの僕も喉を鳴らしてしまう。
恐らく宿儺が何か持ちかけたのだろうが───今は、後回しだ。
「悠仁!────おかえり!」
「オッス!ただいま!!」
立ち上がって片手を上げながら近づけば、悠仁は僕の意図を汲んだようにパッと手を上げる。
そして、僕らは強く、再開のハイタッチを交わした。