第12章 鉄骨娘と元神様
「信頼しろって言ったでしょ」
「してるよ。…ちゃんと祓ってくれるって、信じてる」
「"アンタのサポート"で?」
俯いたまま押し黙ると、釘崎さんは大きくため息をついて、「それは信頼って言わないの」と呟きながら私の方へズンズンと歩んでくる。
「背中を預け合いたいなら、隣に並ぶ相手の実力を信用しなさい」
「実力……?」
「ん」
小さく問い返せば、釘崎さんは大きく頷き、私の額にトン、と指をついた。
「少なくとも、私は私に"弱い"ってレッテル貼ってる奴を信頼なんてしない」
「……っ」
「同じ任務を任せられた以上、"対等"なんだから」
真っ向から放たれた拒絶の言葉に、喉の奥が引き攣る。
────対等。
そんな言葉は、自分には相応しくないと思っていた。
『ナマエ様。呪霊が……』
『ナマエ様。どうかお助けください』
『ナマエ。貴女は強いから、みんなのお願い叶えようね』
大層な敬称なんて当たり前。
祓って、助けて、誰も傷つかないこと以外、考える必要はないと思っていた。
でも、それは誰も信じていないことと同義なのだと、いま気づかされた。
「自惚れてんじゃないわよ、馬鹿」
「いたっ、」
口を尖らせた釘崎さんは私の額を指で弾いた後、残りの半周を走りきるために足を進め始める。
「……っ、釘崎さん!教えてくれて、ありがとう…!!」
少しずつ遠くなっていく背中に呼びかけ、感謝の言葉を伝えると、釘崎さんは薄く微笑んだ表情で振り返った。
「あと半周。次こそ私が勝つから」
「あっ、ちょ…っ、ズルい……!!!」
言い逃げのように走るスピードを上げた釘崎さんに、私も、追いすがるようにグラウンドの土を蹴った。
対等も、信頼も、教えてもらった。
直ぐに改善することなんて、これっぽっちもできる気がしないのに。
それなのに何故か、今は無性に、貴女に───釘崎さんに、背中を任せたいと思ってしまった。