第12章 鉄骨娘と元神様
「そこで!野薔薇にナマエの中にある"当然"を、ぶっ壊してもらおうってワケ!」
五条さんはピンと人差し指を立てながら、軽快にそう言い放った。
人を助けたら、感謝され、認められる。
ナマエと釘崎を衝突させ、ナマエにとって当たり前の理屈を壊す。
(……釘崎が適任か)
『自分をどう扱うべきか』という一点において、釘崎のプライドは誰よりも高い。
そんな高いプライドを持つアイツなら、
たとえナマエに助けられた身だとしても、その過程に納得がいかなければ迷わず指摘できるだろう。
つまり、自分の命を安売りするナマエの悪癖を、全力で、容赦なく踏みにじることができる。
「浸かっていたぬるま湯に野薔薇っていう氷が入ってきたら───ナマエはどうなるかな」
「………性格悪」
とは言ったものの、今回の件に関しては、長年連れ添った俺や五条さんの立場では効きが悪い。
同性かつ同級生の釘崎がやることに意味があるのだろうけれど。
「そもそも、釘崎が思い通り動くとは限りませんよね」
「野薔薇はやるよ、絶対にね」
五条さんは確信に満ちた笑みを深め、とどめを刺すように言葉を落とした。
「だって野薔薇、常にナマエに怒ってんじゃん」
ヘラヘラと笑いながら放たれたその言葉に、俺と虎杖の呼吸が止まった。
二人の間に距離があるのはわかっていたが、その深層にある苛立ちまで見抜いているのは、もはや気持ち悪いとしか言いようがない。
いつの間に六眼は、相手の心情まで読めるようになったんだよ。
「先生って、苧環のこと話す時ちょっと怖くね?俺の気のせい?」
「死ぬほど過保護だからな、この人」
「恵も似たようなもんでしょ〜??」
五条さんは心外だと言わんばかりに肩をすくめたが、その口角は吊り上がったままだった。
"愛"という名の執着は、時として呪いよりも鋭く相手を縛り付ける。
五条さんはそれを誰よりも熟知しているはずなのに、ナマエに対しては呼吸をするようにそれを行使する。
そしてその底知れなさを見せつけられる度、俺の背筋はぞくりと凍らされるのだ。