第12章 鉄骨娘と元神様
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「なあ伏黒。あの二人、仲悪い?」
「……さあな」
ナマエと釘崎の背中を見送りながら、無邪気に首を傾げる虎杖に短く返す。
おそらく、仲が良いとか悪いとか、そういう単純な次元の話じゃない。
お互いがお互いに埋めがたい距離を感じているがゆえに、安易に踏み込めない状況だろう。
「苧環も釘崎も良い奴だし、すぐ仲良くなれると思うんだけどな〜」
何がダメなんだろ、とぼやく虎杖を横目に、俺はそれとは全く正反対の懸念を抱いていた。
釘崎は、基本的に自分軸がブレない。芯のあるやつだと思う。
そして、ナマエはその対極にいる。
相手の顔色と機嫌を窺って生き続ける──常に他人へと軸を置く人間だ。
それが真っ向からぶつかればどうなるか。答えは明白だった。
「なんであそこの二人を組んだんですか。連携グズグズになりますよ」
「え、そうなの?!」
五条さんに問いかけると、隣の虎杖が弾かれたように声を上げた。
当の五条さんは、目隠しの奥で何を考えているのか分からない薄笑いを浮かべたまま、ひらひらと手を振る。
「ん〜、仲良くしてほしい!……ってのは建前で、」
五条さんは一度言葉を切ると、二人が消えていった廃病院の入り口を、どこか冷めた眼差しで見つめていた。
「ナマエには、"ちゃんと怒ってくれる友人"が必要だと思ったんだよね」
その言葉の意図を測りかねて眉をひそめる俺に、五条さんは淡々と核心を突く言葉を重ねる。
「僕も恵も、ナマエが死に急ぐことを叱ってやれる。 でもね、あの子に救われた人間には、それが出来ないんだよ」
救われた手前、命を賭して守ってもらった恩義がある手前、アイツの献身が異常だと気づいても、否定する立場そのものを失ってしまう。
そして代わりに与えられる感謝の言葉こそが、ナマエが自分を削ることを肯定する呪いになる。
五条さんは、その歪な構図を最初から理解した上で、あえて釘崎をぶつけたのか。