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【呪術廻戦】呪いの嫁入

第9章 愛する覚悟


思わず足を止めて体ごと振り返れば、ナマエは今日一番の輝くような笑顔を僕に向け、
上品に包装された細長い小箱を鞄から取り出し、僕の手元へと差し出した。


「え……何これ」
「ふふ、開けてみて?」


促されるまま受け取ってリボンを外し、慎重に箱の中身を確認する。

そこには肌触りの良い黒い布が寝かされていて、一瞬「ネクタイか?」と思ったけれど、持ち上げた瞬間にその用途が理解できた。


────目隠しだ。


しかもこれ、相当質の良い素材で仕立てられている。


「私と恵くんからの、感謝の気持ち!」


そう言ったナマエは恵の腕をぎゅっと取り、また華やかな笑みを浮かべた。


「今日まで私たちを育ててくれてありがとう、五条さん!」


正直驚いた。
まさかこんなサプライズがあるなんて。

ナマエはまだしも、反抗期真っ只中の恵まで参加してるのがまた珍しい。


「……まあ、世話になったのは事実なんで」
「…」


自分を見つめて硬直する僕に居心地が悪くなったのか、恵は一瞥だけをこちらに寄越して ぶっきらぼうにそう言った。

なんだコイツ、頭からケツまで素直じゃないな。


「………ありがとね、二人とも」


サングラスの奥。

不意に視界が熱く潤みそうになったのを、悟られないように空を見上げて誤魔化した。

すると背後から、ズビッ、と激しく鼻水を啜る音が聞こえてくる。


(なんで伊地知が、僕より先に泣いてんだよ)


そう心の中で毒づきながら、僕は二人の子供の頭を、愛おしさを込めてくしゃりと撫で回した。


「……卒業おめでと。ナマエ、恵」


への字口になりながらも大人しく撫でられている恵と、それを見てくすくすと楽しそうに笑うナマエ。


手のひらに伝わる二人の髪の感触と体温を慈しむように、一瞬だけ強く握り込む。


そして次の瞬間、僕は切り替えるようにその手を離し、二人の背中を軽く叩いて、待機している黒塗りの車へと促した。
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