第9章 愛する覚悟
───三月。
長ったらしい卒業式を終えた俺は、携帯に届いた通知に急かされるようにして校門へと足を向けた。
「めっぐみ〜!! 卒業、おめでと〜〜ッッ!!」
校門を抜けると同時に、鼓膜を突き破らんばかりの弾けた声が俺を引き止める。
反射的に溜め息を吐きながら振り返れば、
そこには真っ白な髪を靡かせた長身の男が、巨大な薔薇の花束を抱えて満面の笑みを浮かべていた。
「………そういうの、ナマエだけにしてくださいよ。迷惑です」
「え? 死ぬほど嬉しいって? いや〜、準備した甲斐があったよ!」
「一言も言ってねえ」
グイグイと押し付けられる仰々しい花束を、周囲の視線を避けるように渋々受け取る。
五条さんはそれを見て満足そうに鼻を鳴らすと、促すように黒塗りの車へと向かった。
"校門前で待ってるから、一人で来て"
事前に届いた、たった一言の無機質なメッセージ。
それだけで、何かしら逃れようのない"裏"があるのは嫌でも察していた。
五条さんは無言のまま後部座席に乗り込み、扉を開けたまま俺が隣に座るのをじっと待っている。
そこには、普段の軽薄な態度なんて欠片も感じられなかった。