第8章 百鬼夜行の、その最中※
緩やかな刺激が往復するたびに、全身を焼くような熱が走り、自分の眉間に深く皺が寄るのがわかる。
「っ、…汚ぇから、触んな」
早く何とかして止めさせなければ。
そう思って絞り出した言葉は、皮肉なほど情けなく震えていた。
服の上からとはいえ、こいつの手が、醜く昂った肉塊に触れている現実。
その背徳感に、頭がおかしくなりそうだった。
「恵くんだって、私の汚いところたくさん舐めたでしょ」
ナマエは視線を落としたまま、逃げ場を塞ぐように淡々と告げる。
そして同時に、指先の動きが布地の上から爪を立て、先端をカリカリと執拗に搔き上げるものへと変わった。
ダイレクトに脳を揺さぶる鋭い刺激に、喉の奥から熱い吐息が漏れそうになる。
「…っ、……オイ。こっち、向け」
顔を歪めながら、ナマエの意識をこちらへ引き戻そうと命じる。
すると、ナマエはピタリと手の動きを止め、「なぁに」と蜜のように甘ったるい声音で俺を射抜いた。
カーテンが閉まっていない、静まり返った部屋。
窓から差し込む冷ややかな月明かりが、
ナマエの紅い瞳を扇情的に縁取り、その双眼は微かな愉悦を孕んで細められている。
(………全部、わかってやってんのか)
こうすることで、俺の理性が塵ひとつ残さず壊れることを。
その先で、自分自身が抗いようのない力で壊されることを。
それをすべて承知の上で、こいつは俺を、真っ向から煽っているのか。
「…恵くん、好きだよ」
俺の予測に最後の一撃を加えるように、ナマエの口角が綺麗な弧を描く。
その微笑みは、まるで獲物を追い詰めた獣のように、確信に満ちていた。
こいつがそのつもりなら────
俺は、手加減なんて甘い言葉は、意識の外へ追いやることにする。