第8章 百鬼夜行の、その最中※
「恵。12月24日、どうせ予定ないでしょ?
ナマエとクリパ兼 誕生日パーティしにウチおいでよ」
報告書の提出に向かう途中。
廊下の角でたまたま鉢合わせた五条さんは、
いつもと変わらない軽い口調で、前触れもなくそう告げてきた。
「僕はいないし帰らないから、今度はちゃ〜んと最後までヤるんだよ♡」
「殴りますよ」
一瞬でも"何か深い理由がある"と警戒した自分が馬鹿だった。
続いたその一言で、抱えていた書類の角がくしゃりと歪むほど無意識に手に力が入る。
「とにかく頼んだよ。
24日は絶対にナマエを家から出すな。これ命令ね」
冗談めいた笑顔のまま、言葉だけがやけに重かった。
いつもの悪ふざけと同じ調子なのに、妙に気持ちが悪い。
───やっぱり、何かある。
そう確信した俺は、颯爽と立ち去ろうとする五条さんを呼び止め、問いかけた。
「あの。事情があるなら、回りくどい頼み方せずに話してくれません?」
「んぇ~……」
気の抜けた声を漏らしながら、五条さんは顎に手を当てて口を結んだ。
考えているというより、
言うか言わないかを天秤にかけている───そんな顔だった。
この人が本気で言葉を選ぶ場面なんて、これまでほとんど見たことがない。
だからこそ、その理由が"誰"に関する話なのかは聞くまでもなかった。