第5章 オーバーライト※
僕が何を考えているのか分からないのだろう。
ナマエはただジッと、僕の顔を不思議そうに見上げている。
その清らかな瞳を濁らせたくないと願う自分を、心の奥底へ押し込めて。
僕は、ナマエの中に燻るその熱の名前のヒントを、教えてやることにした。
「それは友人として?
それとも───……男として?」
ナマエの瞳が戸惑うように僅かに揺れる。
「……?それは、何か違うの?」
「うん。ぜーーーんぜん、違う!」
僕はナマエの両肩を掴み、軽く前後に揺らして意識をこちらに引き戻してから、瞳を真正面から見据えた。
純粋なままでいて欲しい。
何も知らないままで、守ってやりたい。
──でも、それでこの子が壊れてしまうのなら。
僕という名のぬるま湯から引き剥がしてでも、
一人の親として気づかせてやらなきゃいけない。
「気づいたら目で追ってたり、触れられて嬉しかったり、他人に触られるのが嫌だと思ったり」
「……、」
言葉を重ねるたびに、ナマエの表情が少しずつ変わっていく。
ナマエの中で、恵がただの"友人"という枠から溢れ出していくのがこちらまで伝わってくる。
「心当たりがあるなら、それは後者だね」
「……」
ナマエは何も言わず、ただ困惑した表情で胸元の服を握りしめていた。
その拳の震えこそが、この子がもう"僕だけのナマエ"ではないことを、何よりも残酷に告げていた。