第5章 オーバーライト※
何度も、何度も角度を変えて唇を重ねた。
互いの鼻先が触れ合う距離で、掠れる吐息を交換するたびに脳の芯が痺れていく。
ナマエの手が震えながら俺の肩に添えられた瞬間。
それに答えるように、俺はナマエの後頭部へ手を伸ばし、指先を髪の奥へと潜り込ませた。
我慢の限界なんてとうに超えていた。
撫でるように髪に指を滑らせ、頬から輪郭をなぞって逃げ場を無くす。
そして無防備に開かれた隙間へ舌を差し込めば、ナマエの身体がビクンと大きく強張った。
「…ん、ぅ……ふ、ぁ……」
「……」
絡み合う舌先で、ナマエの中に残っているあの日の記憶を根こそぎ塗りつぶしていく。
お互いの唾液が混ざり合う生々しい音が、密室に響き渡る。
ナマエは俺の服を強く握りしめ、溢れる吐息に溺れながら必死に俺の舌についてこようとしていた。
その不慣れで懸命な応えが、俺の中の加虐心を刺激する。
「っ、は……」
「はあっ…ぁ、」
一度唇を離せば、熱に融けた銀の糸が俺たちの間に細く、長く揺れた。
潤んだ瞳で俺を見上げるナマエの唇は赤く腫れ、その心も身体も、今は俺だけに蹂躙されているのだと、残酷なほどに実感できた。
「………」
「っ……そ、こは、」
服を押し上げるだけでおざなりにしていた胸元へ視線を向けると、ナマエの震えた声が降ってくる。
白い下着に包まれた、控えめな膨らみ。
今からお前のここに触れるのは俺だと刻み込むように、俺はもう一度、甘く声を漏らすその口に深く蓋をした。