第5章 オーバーライト※
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脳が溶けるような口付けに、思考が奪われていく。
私が熱に支配されるのを見計らったように、恵くんの大きな手が、下着のワイヤー部分にかかった。
「んッ……、め、ぐみ、く…ンっ」
待って、と制止する声すらも甘く飲み込むように、次から次へと深い口付けの嵐が降ってくる。
酸素を求めて縋るように口を開けば、恵くんの熱い舌がぬるりと侵入してきて、呼吸の仕方さえ忘れてしまいそうになる。
「んっ、……!!」
不意に下着のワイヤーがぐいと持ち上げられ、胸元に冷たい空気が触れる。
驚いて閉じていた瞼を開くと、至近距離で恵くんと視線がぶつかった。
一瞬弾かれたように目を見開いた恵くんは、すぐに熱を帯びた瞳を細め、舌を絡めながら空いた片手で私の頭を優しく撫でる。
──── なに、これ。
さっきの、私を慈しむような視線を思い出して、戸惑いが生まれる。
これは、あの日の上書きのためにしているだけ。
穢れを穢れで塗りつぶすだけの、巫女としての罪を重ねるだけの行為なのに。
「………ナマエ」
「っ、」
恵くんに名前を呼ばれる度に、全部がどうでも良くなってしまう。
巫女としての矜持も、穢れへの恐怖も。
恵くんの全部が私の心拍を狂わせて、正常な判断力を奪い去っていく。
「っ……!!」
絡んでいた視線が解け、恵くんの頭が視界から消えた瞬間。
ちゅ、という湿った音と共に胸の頂きを熱い口内に食まれ、身体が弓のように跳ねた。
「ひ、あ……っ! めぐみ、くん……っ、これ、や……、」
薄い皮膚を吸い上げ舌先で転がされる、苛烈なのに優しい愛撫。
今まで誰にも触れさせたことのない場所が恵くんの熱い唾液でじわじわと濡らされ、自分のものじゃなくなっていく感覚に頭が真っ白になる。
「っ、は……、止めるか?」
「…っ」
吸い上げていた口元を離し、わずかな銀の糸を引かせた恵くんが私の顔を覗き込む。
視線の先の瞳は、どろりと暗い熱に濁っていた。