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【呪術廻戦】呪いの嫁入

第5章 オーバーライト※


俺は何も言えず、喉に蓋をしたままナマエの言葉を聞き続けた。

背中に預けられた額から伝わる微かな体温が、コイツの過去の重みとなって俺の肌に沈み込んでいく。


「それで、あの日───男の人から真っ直ぐな思いを向けられるのも、変なところを触られるのも……初めてで。
……怖くて、消えちゃいたいって思ってた」


あの時ナマエに向けられていたのは、愛情なんて生暖かいものではなく、ただの一方的で暴力的な欲望。

コイツはそれすらも受け止め、不快感を押し殺せたからこそ、あの時 あの男を慈しむような目で見られたのか。


嫌に納得してしまうこの思考を、今すぐ叩き壊したかった。
理由がどうあれ、アイツがナマエを恐怖させ、傷つけた事実に変わりはない。


「私は穢れちゃいけないんだ、村のみんなが言ってたことは正しかったんだって、そう思ったの」


脳裏に、あの日の風呂場で桃色の泡に包まれていたナマエの姿がフラッシュバックし、肺の空気が凍りついた。


あの時、ナマエは幼い頃から刷り込まれてきた"清廉な巫女"という呪いのような理想を守るために自分を責めて、一人でその汚れを洗い流そうとしていたのだ。


清廉という名の残酷な鎖。

しかし、背中越しに伝わってくるナマエの吐息が今、その鎖を溶かしながら俺の肌を焼き続けている。


守りたいという願いと、上書きして塗り替えてしまいたいほどの独占欲。


その境界線が、音を立てて崩れていくのが分かった。
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