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アブシールの英雄

第3章 第三話


「よりによって…ユリウス、お前…嫡男かよ!!なんだって、そんな大事なご長男様が戦の最前線に!?」

ハリスは声を張り上げて、ユリウスに聞いてきた。

「…この戦には自分の意思で参加した。

俺は、オーギュスタン家の人間として生きるのを辞めたんだ」

ユリウスは感情もなく、淡々とした口調で説明する。

「ふ~ん…名家のお坊ちゃんには庶民に分からない悩みがあるわけですか」

「『ハリス』なんて名前、なかなか庶民につけないぞ。どこかのお坊ちゃん」

ハリスのちょっと嫌味なセリフに、同じように返してみせるユリウス。

「お前らに比べたら、ド庶民だわ!毎日高級肉なんて食えないし?ワインなんて贅沢品だし!」

ハリスは唾を飛ばしながら反論する。力が入っている。

「毎日肉を食べてるわけじゃない(食べられないとは言わない)し、酒なんか飲まない」

ハリスの言葉にちょっとズレたことを言うユリウス。

「え?お前らケンカしてる?」

とさらにボケたことを言うソルト。

ソルトの言葉に、((ケンカではない…))と二人は心の中で突っ込むのであった。


「まあ…じゃあ、お前が継がなくても、お前には弟とかいるってことか」

とハリス。

「いや、ユリウスには兄弟はいない。

一番年が近いのが俺で、後は俺の兄貴が三人いるから、オーギュスタン継ぐのは一番上の兄貴じゃないかなぁ?

ユリの母さんが再婚してもう一人産みでもしなきゃ」

ソルトは腕を組み、ユリウスを見ながら言う。

「…俺にはもう、何の関係もない話だ」

ユリウスは、ソルトと目を合わさずに吐き捨てるように言った。

ハリスはユリウスの表情を想像しながら「ふーん」とだけ言う。

「ここだけの話にしておいてもらえるとありがたい」

とユリウスは言うが、

「あ~…俺もそうしてやりたいのはやまやまなんだけど…

ここの連中って、他人の噂話とか大好物な奴らだからさ…

あんまり保証できないんだよな。さっきの話、誰か聞いてたかもしれねぇ。新入りの話なんて、みんな興味津々じゃん?」

ユリウスの恰好も相まって、と付け加えるハリス。

「ユリウス!ごめん!」

ハリスの言葉が言い終わる前に、ソルトは素早く謝罪した。

「今更どうこう言ったって仕方のない話だ。なるようになれ」

と仁王立ちのユリウス。


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