第2章 第二話
闘技場は満員御礼。
地面が揺れるくらいの大歓声が響き渡る。
「私の忌むべき行いに。我がアウグスト家に、心よりお詫び申し上げる」
細い剣を顔に近づけ、お祈りのような言葉を言う老剣士。
北方収容所最強の剣士、アウグスト。老齢にして、見事な剣さばき。
「くぅ~~~っ痺れるぜ老剣士!!抱いてくれー!」
席の真ん中で、背伸びしながら観戦するハリスが声を張り上げる。
「…ということがあってな」
「何だそれ!!カッケェーーー!!俺も見たいぞアウグスト!」
ハリスの臨場感のある説明を聞き、同じように興奮するソルト。
「だろ!だろ!超カッコいいんだぜ!」
となぜか誇らしげなハリス。
そして、そんな二人の様子を黙って聞いているユリウス。
「お前の主君は、随分クールボーイなんだな」
その様子を見て、物足りなく感じたのかハリスが言う。
「ユリは主君じゃない!従兄弟だよ!」
ソルトは、ハリスの言葉にムッとしたように言う。
「えええ?そうなの…?なんかごめん…見劣りしてた」
「ハリスまで、ひでぇよ!それ、ジョークじゃねえじゃん!!」
ハリスは心から謝ってきたので、ソルトは悲しくなった。
…ちなみに二人でいると、よく言われる。
「ここで最強でも、外に出れば最強に非ず…ということか。最強ならアデレータ海戦も後方支援だろ?」
二人の会話を聞いてか聞かずか、ユリウスは疑問をハリスに聞く。
「今のところ、アウグスト並みに強い奴が他にいないっていうのもあるかも…そうであって欲しい」
(つまりアウグスト一人のおかげで前線に出ることは免れているということか…さすがメディシスの守り神と呼ばれた男だ…)
ユリウスはハリスの言葉を聞いて一人考えていた。
(数年前に戦死したと噂で聞いていたが…こんなところにいたとは。
文字通り、ここでも彼は守り神なわけか…)
「あーー!!」
突然ソルトが、耳を塞ぎたくなるような大声を出す。
何かを思い出したようだ。
「思い出した!アウグスト家って有名な将軍がいるじゃん?グリフォンだっけ?グリフォン将軍」
とソルトは興奮した様子でユリウスに聞いてきた。
「グリフィスだ、全然ちがう。
その老剣士は、グリフィス・アウグスト将軍。確か70近かったはずだが」
「え?そんな年なの?スゲェな、人生50年の時代に」