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アブシールの英雄

第1章 第一話


「ヨォ!お前ら見慣れないな。新入りか?…出身は?」

松明の明かり1つだけの湿気っぽい地下牢の中で、ユリウスとソルトは、明るい声の、二人より少し年上そうな青年に声を掛けられた。

「俺たちはメディシス!お兄さんは?」

と、ソルトは答える。

「おお、お前らもかぁ。…あの海戦以来、ここも賑やかになったよなぁ」

青年は顎髭を触りながら、しみじみと言う。

「え?どういう意味?」

ソルトは聞き返す。

「俺たちは、ちゃ~んと民族ごとに分けられて収容されてるのさ。
その中でも、ここはそこそこ模範的と見なされた奴が入ってる上級牢獄さ」

模範的?と、ソルトはユリウスを見る。
あんな大口叩いた我々を、上級牢獄に入れるとは…。…逆に嫌味か?

「?

俺は海戦以前からここにいたんだが、海戦後はお前たちみたいなメディシス兵たちが大勢ここに来たんだ」

と青年が続けた。

青年は『ハリス』と名乗った。年は25で、やはりユリウスたちより少し年上だった。

「…メディシスはやはり、大敗したのか…」

ユリウスは、海戦を思い出しながら言うと、

「大敗も大敗よ。メディシス側は八割くらいの舟が沈んだんじゃない?
俺たちは陸から見てたよ」

と、ハリスが言った。

「え?ハリスも戦争に行ったの?」

ハリスの答えに驚いたようにソルトが聞く。

「ああ。囚人は兵役がメインだからな。ほかに土木とかインフラに回されるけど、兵役が多いな」

とのこと。

ユリウスとソルトが顔を見合わせていると、


「お前たちは知らないと思うけど、この国は完全なる弱肉強食だから。強い奴は美味いもんが食えたりいい思いができるが、弱い奴は戦で最前線に立たされる」

とハリスは二人の前で腕を組んで言った。

「え~マジかよ。で、俺たちは最前線なの?」

一番気になるところをソルトは聞いた。

「ん?アデレータ海戦の最前線は海上だぜ。
俺たちは海に一番近い陸で見てた。まあ、ぎりぎり前線は免れている感じだな」

なるほど…とソルトも顎を触りながら頷く。

「その『強さ』の序列は、どのように決めるんだ?アブシールから見た、その民族の兵力や属する国の国力、ということなのか?」


ユリウスは、なぜか納得しているソルトを押しのけてハリスに聞く。
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