第10章 第十話
「へぇー観光なんだ! 一人で? 危なくない?」
とソルトが矢継ぎ早に聞く。
「女、子どもでもあるまいし…」
とムラサメは静かに答える。
「だって、ムキサメって将軍なんだろ?」
ソルトの不意打ちの言い間違いに、ジザベルが噴き出す。
「……」
ムラサメは無言でソルトを見る。
(なんか困ってるよ、ムラサメ将軍…)
一同はその様子を見て、思った。
「そんなに…グイグイ来られると…どうしたらいいか、…分からない」
と、ムラサメは無表情ながら、声は非常に困惑していた。
「ま、俺たちは同じトラベラーってことで! 仲良くしようぜ! 極東!」
そう言ってジザベルはムラサメの肩に腕を回した。
それ見て、クラシリカがたしなめる。
「ジザベル様、悪ノリしては北方出身者の心象悪くなりますのでやめてください」
しかし、
「別に…構わない…」
まんざらでもなさそうなムラサメ将軍。
(え? いいの?? むしろ嬉しいの??)
と、ジザベルは手ごたえを感じていたりして。
「将軍、貴方は有名人だ。そうやすやすと受け答えするのは、命に関わるだろう?」
ユリウスはムラサメに言う。
「…『将軍』か…
俺は元々身分が高かったわけではない。…ので、慣れない。身の振り方もよく分からない。
だからと言って、気安く話しかけられることもない」
ムラサメはポツリポツリと答える。
「今後、陽気な北方出身者が、有名人であり、物珍しい貴方に声をかけることもあると思う。
ただ、この国は弱肉強食だ。少し気を付けたほうはいいと思う。
…この国に、俺より長くいる貴方には不要な言葉かもしれないが」
ユリウスは、少しお節介だったかも、と思いながらも言わずにはいられなかった。
そんなユリウスを、ムラサメはじっと見つめて、
「あなたは…変わった『ヒト』だな」
何か含みのある言い方をされた。
ユリウスは、何か思い当たることがあるのか、はっと息を呑んだ。
「俺が死んでも、代わりはいる」
ユリウスのそんな様子を知ってか知らずか、ムラサメは言葉を続けた。
「将軍らしからぬ物言いだな」
聞き捨てならなかったのか、ジザベルは珍しく強い口調で言った。