第3章 前提
修学旅行が始まって数日後。
夜遅く、ウサミが希灯の部屋を訪れた。
床に敷かれたラグの上に座り、ウサミと向かい合う。
「どうでちゅか、カムクラくんの様子は……」
『今のところは問題なさそう。ただやっぱり、絶望の残党ってことには変わりないしねぇ……。』
カムクラは相変わらずだ。
みんなと軋轢を生むようなことは特にせず、毎日卒なく採集や掃除に励み、そして希望のカケラを埋めていっている。
何もかもが順調だ。トントン拍子すぎる。
カムクラと希灯のカケラは明日には全て埋まりきるだろう。
『とりあえず明後日からしばらくは七海ちゃんにカムクラくんを任せるようにしよっか。まだ様子見はしときたいし。』
「何を考えているか分からない人でちゅもんね……油断は禁物でちゅ」
まだカムクラと他の被験者を一対一で過ごさせるのには不安があった。
ひとまず希灯と同じ監視者である七海千秋に、カムクラとの希望のカケラを埋めるよう頼むことにする。
『もしもの時は七海ちゃんを守ってね、先生。』
「もちろんでちゅ。引き続き見ておきまちゅ」
『ありがとう、よろしく。』
ウサミの快諾に希灯が頷く。
『最後まで大人しくしててくれるといいね……。』
「そうでちゅね。でも、もし何かルールを破るような場合であればマジカルステッキで多少のおしおきが可能でちゅし……卒業にまで持っていけさえすれば、あとはこちらのモノでちゅ。それまで頑張りまちょう」
ウサミも不安げながら、元気付けるように腕を振り上げる。
『うん。あ……卒業するときって、ちゃんと日向くんのアバターが現実の日向くんに反映されるよね?。うっかりカムクラくんのアバターが優先されるなんてこと……ないよね?。』
「その点は大丈夫でちゅ。あちしが卒業試験の段階で日向くんを卒業させ、カムクラくんを留年させれば確実に日向くんのアバターだけが外の世界に出られまちゅから」
希望のカケラを全員が全て埋め終わったところで、ウサミによる卒業試験を経て修学旅行は幕を閉じる。
卒業を認められれば現実の世界に戻れて、認められなければ島生活が続くことになる。