第4章 言わなくていいか
本丸に来て、三日が経った。
俺は朝起きた瞬間から、体が鉛みたいに重い事実に悩まされていた。寝不足ではあったが、布団から起き上がるだけで軽く息が切れるなんてどう考えてもおかしい。
(……霊力が、減ってるんだろうな)
末端神経から心臓まですうっと冷えていくようなあの感覚が治らない。
最初は気のせいだと思っていた。
環境が変わったせいかもしれないし、転送の負荷かもしれない。
でも、日を追うごとに確実に、体が削られていく。
それでも、俺は何も言わなかった。
(言ったところで、どうせ……)
頭の中で、肥前の声が再生される。
――監視役。
――無能。
――サボり癖。
最初の以外は、実際に言われたわけじゃないけど。でも、報告書にそんな内容が書かれているのは分かっている。
そろそろ起きなければと、寝室と隣合った執務室にノロノロと向かう。朝ご飯は食べる元気がないのでスキップすることにする。
とりあえず、机に向かって座ったものの、書類の文字が頭に入ってこない。
視界の端が、時々暗くなる。集中しようとすればするほど、頭の奥がぐわぐわと痛んだ。
(……だめだ)
無意識に、支給された端末を手に取る。
画面を点けただけで、特に用もない。
「……」
端末の光をぼんやり眺めていると、執務室のゆっくりと襖が開く音がした。