第3章 桜の木の下
政府の転送装置は、いつ使ってもクラクラして酔いそうになる。俺は思わず目を閉じた。光が収まる気配がしたが、眩しさに目を開けられない。
「……目、開けろよ。転送はもう終わってんぞ」
ダウナーな色気のある声に思わずハッとして、恐る恐る目を開けると、目の前に男が立っていた。身長は同じくらい。
少し猫背気味で、全体的に黒っぽく薄汚れて着崩された装束、腰に差された刀、首元のだらりと垂れた包帯に、特徴的な赤が混じる髪………
(……顔、いいな……)
反射的にそう思ってしまった自分自身に、盛大に動揺する。
いや、知ってるよ、刀剣男士は顔が良い生き物だ。知ってる。知ってるけどさ。
切れ長で、少し目つきの悪い瞳も、スラリと通った鼻に、薄い唇、整った輪郭……やばい、好みどストライクかもしれない。
俺って同性愛者だったっけ??いや今まで普通に可愛い女の子と付き合っては振られてたからそんな筈は……とぐるぐる考え込んでいる俺に、彼は近付いてこちらの顔を覗き込んだ。
「……なに、ぼーっとしてんだ」
鋭い視線がこちらを射抜く。やばいやばい至近距離で見ても顔が良すぎる。油断すれば緩みそうになる口元を手で隠す。
「……おい、聞こえてんのか?」
「あっ、え、ああ!聞こえてます!」
慌ててそう答えて、背筋を伸ばすと、男はわずかに形の綺麗な細い眉をひそめた。
「……元気だな。報告書よりは」
その一言で、空気が変わった。
俺のやらかしたこと知ってるって訳ね、了解。
「おれは肥前忠広。あんたの監視役だ」