第7章 幽霊
今度ははっきり声がした。部屋の外からだろうか。
「……っ!」
周囲を睨むが、外に人影はない。電気をつけるか、審神者が静かに聞いてきたのに首を振る。
『ねぇ、主。元に戻ってよ!』
『あの男に何か吹き込まれたのか…?』
ぞわり、と肌が粟立つ。泣きそうな声と、怒りの滲む声。
——聞こえた。間違いなく、おれにも。
一旦声が止んだのを確認して、視線を布団へ向けると、審神者が、びくりと身を強張らせていた。
「……肥前」
審神者が震え交じりに名前を呼ぶ。
「…聞こえた、よな」
審神者は、ゆっくり頷いた。
「いつも、こんな感じなのか?」
その問いかけの答えを待つ余裕もなく、再び声が再開する。
『痛いなぁ……でも、我慢しないと……』
『なんで、こんなことになったんだ』
苦しげな声。
嘆く声。
肥前は、歯を噛みしめた。
——こんなのを、今まで一人で。
声が再び止んだ。
「……いつも、こんななのか?」
できるだけ落ち着いた声で聞く。
審神者は、少し迷ってから、答えた。
「……いつもは、もっと……」
そこで、言葉が途切れる。
別の声が、割り込んだからだ。
『きっと、もうちょっとの辛抱ぜよ』
懐かしいあの声。間違えるはずもない、あの、昔馴染みの声。
「……っ」
肥前は、息を呑んだ。
それだけではなかった。
『こうなったら、おれが斬るしかねぇ、か……』