第7章 幽霊
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夜回りのつもりだった。
日中は騒がしくなってきた本丸でも、こんな真夜中だと静かだ。酒飲みの刀も、今日は早めにお開きにしたようだ。
昼間の出陣で昂った神経が、晩飯を食っても、風呂に入ろうとどこかおさまらず、布団を抜け出すついでに、本丸を見回ることにしたのだ。
月明かりの元、案外歩くのは心地良く、たまにはこんなことをしてみるかと思えた。
今日は出陣があったから、審神者との霊力補給はしていない。昨日その分多めに渡しておいたし、留守を預かってもらった刀剣たちからも倒れたという報告は聞いていないから、問題はないと思うが……
そんなことを思いつつ、執務室の前を通りかかって、足が止まった。
奥の方から、灯りが漏れている。おおかた光源は執務室の隣、審神者の私室だろう。
(……まだ起きてやがる)
時計を見れば、とっくに丑三つ時だ。
そういえば、審神者の目の下にはいつも隈があったのを思い出す。己も隈ができやすい体質だから、てっきり審神者もそういうものかと思っていたが、夜更かしが原因だったか。
叱るつもりで、暗い執務室に立ち入り、奥の襖に手をかける。
「おい、早く寝——」
襖を開きかけて、言葉が途切れた。
部屋の中央には、ちゃんと布団は敷かれているのに、そこに人影はない。
審神者の不在に少々肝が冷えつつ、視線を巡らせると部屋の隅に、彼がいた。
そう、部屋の隅に、彼はいた。
壁に背をつけるように座り込んで、膝を抱えている。
頭にはデカいヘッドホン。
「……なにしてんだよ、あんた」