第6章 霊力補給※
キスなんて慣れてる筈なのに、肥前とのキスは何故かいっぱいいっぱいになってしまう。
そろそろいいかな、という頃合いでちょうど息も苦しくなるので、彼の胸をトントンと遠慮がちに叩く。
「……っ」
肥前の動きが止まって、やがてゆっくりと唇が離れていく。
つーと二人の間を銀の糸が引いているのをぼーっと眺める。
深い緋色の瞳が細められて、じっと見つめられる。
…勘違いしそうだからそんな熱のこもった目で見ないでほしい。
「……今日の分はおしまいだね、ありがと」
「ん、そうかよ…」
そう、おしまいなのだ。体が軽くなって、少しふわふわとしながら俺は礼を伝えると、つっけんどんに彼は言った。
気づけば、キスのあとに、そのまま他愛もない話をするようになっていた。
お互いの政府時代の話とか。
今日、本丸であったこととか。
俺が笑うと、肥前が呆れたように静かに口角を上げる。それが、やけに嬉しい。
この本丸が怖かった。
元々来たくて来た場所じゃないし、なぜか霊力がなくなるし。夜は幽霊の声が聞こえるし、体調最悪だし。
先のことなんて不安しかなかった。でもこの時間だけは少しだけそういうの全部忘れられる気がした。
一日頑張ったご褒美みたいな、甘美な時間。
夕食に先に向かう肥前を見送った後、唇に残る温度を毎晩、指でなぞってしまう自分は、もう手遅れなのかもしれない。ふと、そんなことを思った。