第5章 足りない※
その日の午後、俺は鍛刀部屋にいた。後ろには近侍サマが控えている。
顕現の陣は、静かに光っている。
早く戦力を整えなければいけない焦りと体のだるさで頭の中はぐちゃぐちゃだったが、息を整えて霊力を込めた。
(……よし)
そう思った瞬間だった。
視界が、白く弾けた。
「――っ!?」
足元が消えるようだった。踏みしめていたはずの床の感触がなくなり、体が前に傾いた。
「主ッ!」
肥前の声が聞こえた気がした。
しかしながら、その声に応える前にどんどん意識が薄れていく。
「……っ、しっかりしろ!」
どうやら地面にぶつかる前に肥前が体を支えてくれたらしい。でも、足に力が入らずふにゃふにゃと座り込んでしまう。
まぶたが重くて、開けられない。
「……ッくそ……」
珍しく焦りを隠しきれないような声が耳元でする。
不意に支えられた体が浮いた。抱き上げられているのだと、ぼんやり分かったところで意識が途切れた。
「……軽すぎだろ……」