第39章 スカートと青春
══閑話══
それから、紅海と五条の部屋には静かな時間が流れていた
今日は、2人の部屋はロールスクリーンを上げてリビングを繋げている
五条にココアを手渡して、紅海もソファへ座る
『こうして見ると、不思議』
「何が?」
『部屋』
リビングを見回しながら笑う
『知らない人が見たら、びっくりするよね』
「あー、だね」
五条も周囲を見渡した
『でも、あんまり部屋へ人を呼ぶ事もないから、そんな心配もないか』
紅海はココアを一口飲む
『私は京都にいた頃も人呼ばなかったし
悟も忙しいから、あんまりいないでしょ?』
「まぁ、昔よりは減ったよね」
五条は少し考えてから肩をすくめた
『…昔より?高専の時のこと?』
「ん~、卒業して少しくらいまでは、適当に来る奴もいたかな」
その言葉に、紅海は静かに頷く
そっか…自分が京都へ行っていた数年間
その間にも、悟には悟の時間があった
知らない人との思い出が有るんだろうな
それは当たり前のことなのに
『悟、モテそうだしね?』
つい、口にした
五条は笑う
「まぁ、確かに、困ったことはないね」
あまりにも自然な返事で
だからこそ、冗談には聞こえなかった
『…そっか』
それだけ返して、紅海はカップへ視線を落とす
困った子とがない…その言葉が胸に残る
どう困ったことがないのか
聞けば済む話なのに、聞けなかった
やっぱり…悟は、みんなの憧れだよね
強くて、格好良くて、放っておいても人が集まる
そんな人が、自分なんかを特別に見る理由なんてない
監視してくれるのも、気に掛けてくれるのも
同期だから
それ以上でも、それ以下でもない
そう考えた方が、きっと傷付かない
紅海は小さく笑って
『そろそろ寝よっかな…おやすみ、悟』
と言い、静かに立ち上がる
ロールスクリーンがゆっくりと下りていく
五条はスマートフォンから顔を上げ
「おやすみ~」
とだけ返した
その声はいつもと変わらない
だから紅海は、自分の胸に生まれた小さな痛みを、考えない事にした