第39章 スカートと青春
ある日の夕暮れ…
十月の風は夏ほど湿っておらず、頬を撫でる空気にも少しだけ秋の匂いが混じっていた
「先生ー!これ、どしたの?」
職員室から顔を出した五条は、虎杖の足元に積まれた段ボールを見て数秒止まった
「……あ〜忘れてた」
どしたの?と、釘崎が覗き込む
段ボールの蓋を開けた瞬間、色とりどりの花火がぎっしり詰まっていた
噴き出し花火や線香花火、手持ち花火
袋いっぱいの打ち上げ花火まで入っている
「買いすぎでしょ」
釘崎が呆れる
五条は悪びれもせず肩をすくめた
「夏休みにやろうと思ってさ…交流会とか任務とか忙しすぎてね?タイミング逃した」
虎杖が目を輝かせる
「じゃあ今日やろうよ!」
釘崎がつっこむ
「十月だけど?」
その様子を聞いて五条は笑う
「花火に季節なんかないでしょ?」
「そう?」
「じゃ、やるか!花火!紅海も呼んで、皆の夏の青春を取り戻そうよ」
何それ?とか言いながらも1年達はヤル気満々だ
日が落ちる頃、校庭の隅に火を灯す
最初に歓声を上げたのは虎杖だった
「うぉー!」
「すげぇ!」
勢いよく火花を散らす花火を振り回す
「危ない!」
と釘崎に怒鳴られる
「虎杖!人に向けんな!」
「ごめんごめん!」
「全然反省してねぇ!」
その横で伏黒はツッコミ
線香花火へ火を灯していた
「伏黒、初っ端から地味!」
「初めは、これくらいでいいんだよ」
「ジジくさ」
「釘崎に、このセンスは解らんだろ」
「はぁ!?」
言い合いが始まる
その様子を見て、紅海は声を立てて笑った
「ふふっ……」
小さな笑い声だった
五条は少し離れた場所で、その横顔を眺める
……紅海が笑っている…その事実だけで、胸の奥が少し軽くなる
京都で見た、自分を責め続けていた横顔
それが頭をよぎる
だから今、こうして笑っている顔を見ると安心する
あんな顔で笑われたら、ずっと見てたくなる