第39章 スカートと青春
夕方…職員室
「紅海」
『何?』
「別に」
そのまま自分の机へ戻る
『……?』
さらに数十分後
「紅海」
『だから何?』
「呼んだだけ」
『もう、悟どうしたの?』
紅海は首を傾げる
「いや?」
笑顔はいつも通りだ
でも、どこか落ち着かない
その様子を離れた席から見ていた硝子が、小さく笑う
「五条、気になるなら聞けばいいだろ?」
「何が?」
「嫌われたかどうか」
一拍
五条の動きが止まった
「……別に」
硝子は書類へ視線を戻す
「面倒くさいやつ」
紅海は首をかしげる
その日の帰り際
宿舎の帰り道、二人きりになると
五条は少しだけ歩幅を緩めた
「ねぇ、紅海」
『ん?』
「まだ、あの動画引いてる?」
紅海は少し考える
『野薔薇ちゃんのスカート?』
それから苦笑した
『少し…引いた』
「……」
『でもね悟の格好に引いたんじゃないよ』
「え?」
『悟が女の子のスカートを勝手に履いたこと』
言葉を選びながら続ける
『あれがもし、男の子の制服だったら、多分笑ってた
でも、野薔薇ちゃんのスカートだったから…
やっぱり、それは駄目だよ』
諭すように
本当に、そう思っているだけ
「……うん」
五条は静かに頷いた
その紅海の一言だけで
胸の奥につかえていたものが、少しだけ軽くなる
この年で叱られたのに、嫌われてないのが解ると嬉しくなる
「ごめん…」
珍しく、素直な謝罪だった
紅海は少し驚いたように目を丸くして
『うん』
へにゃっと笑った
『次はやっちゃ駄目だよ』
「……努力する」
『そこは「やらない」だよ!』
思わず二人とも笑う
『もぉ…悟って、たまに人が思い付かない事するんだもん、ビックリするよ…』
その様子を少し離れた所から目撃した虎杖は、小さく笑っている
紅海先生と仲直りできて良かったね…
そして、もしかしたら…五条先生が唯一気の抜ける日とが紅海先生なのかもしれないな…と思うのだった