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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第38章 お粥と意地


朝…窓を開けると山から流れてきた涼しい風が廊下を抜けていく

五条は大きく伸びをした
「…よし」

身体は軽いし頭も冴えている
熱っぽさは綺麗に消えていた

「一晩で治るとか…さすが俺」
口元が少し上がる
部屋の扉を開けると、ちょうど向かいの部屋から、夏油も出てきた

「よ、おはよう」
「お…熱下がった?」
夏油は五条の顔を見るなり、小さく笑う

「楽勝、一晩で治った」
親指を立てる
「それは良かった」

五条は何気なく続けた
「紅海がお粥作ってくれたしね」
どこか得意げな口調だ

夏油は「ああ、あれね」と自然に頷く

「?」
「美味しいよね、生姜がちゃんと効いてて」

五条の思考が止まる
……は?

夏油は気付かず続ける
「身体も温まるし、風邪の時にはちょうどいい」

ちょっと待て、なんで知ってる
「……お前」
「うん?」

「食ったことあんの?」
「あるよ」

あまりにも普通の返事だった
「先月、風邪ひいてね
紅海が心配して作ってくれた」

五条は眉をひそめる
「お前が風邪?」
「私も人間だからね」

「そんなことあった?」
夏油は少し呆れたように笑う
「悟…」
「ん?」

「もっと周りを見た方がいい…
結構、授業中死んでたよ?」
「あー?ふーん?」
「……」
夏油は思わず立ち止まった
コメント、それだけ?

「普通もう少し有るだろう」
「え?今が無事なら良いじゃん」
五条は肩をすくめる


「それはそうだけど」
五条は適当に返事をしながらも、頭の中は別のことでいっぱいだった
俺だけじゃ無かったのか
胸の奥に、小さな何かが引っ掛かる

何故か面白くない…が、怒る理由でもない

夏油は横目でそんな五条を眺め、ふっと笑った
「何?」

「もしかして…ショックだった?」

五条の足がぴたりと止まる
「……はぁ!?んな訳ねぇだろ!」
声だけは無駄に大きく廊下に響く

夏油は肩を揺らして笑った
「そう?」
「そうだよ」

「じゃあ何でそんな難しい顔してるの」
「してねぇ」
子どものような反応に、夏油は吹き出し

「笑うな」
「いや、だって」
夏油は目尻の涙を拭う

「君、分かりやすいから」
「何が?」

「秘密」
「は?」

教室の扉が見えてくる
夏油は先に中へ入りながら、小さく呟いた
「そのうち分かるよ」
「意味分かんね」
五条は不満げに鼻を鳴らした
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