第23章 指と欠片
早朝の駅、
人の流れが目覚め、足音と電子音が慌ただしい
その中で、紅海だけが、のんびりと歩き、そして立ち止まった
改札口の前、売店で見慣れた姿が視線に引っかかる
五条悟だ
『あれ?悟……悟も岩手?』
素直な疑問…
「や~、それがさ」
五条はいつもの調子で手を上げる
「恵に両面宿儺の指の回収任せたんだけど
昨日、所定の場所に無いって電話掛かってきてさ
とりあえず上が煩いだろうから早朝出発したんだけどね~」
軽い…内容と釣り合っていない程に
発車時刻に合わせて、歩きながら話す
『ふーん……じゃないよ!?えっ!?両面宿儺って、あの??伏黒くんに任せたの?まだ、こっちに悟いるのに?』
軽すぎて危うく納得しかけた紅海は
伏黒を心配した様で、言葉が少し早くなる
一瞬だけ、間が空く
「そりゃ、僕が全部片付けることは出来るよ?」
五条は肩を竦める
「でもそれじゃあ、何にも成長しないでしょ?」
当たり前のように言う…それは、彼の“やり方”だ
『そうだけど…』
納得はするが、安心はしない
五条はそれを見て、ほんの少しだけ笑う
「何?恵の心配?妬けるなぁ~」
冗談めいた声
けれど、その奥に混ざる微かな棘…紅海本人は気付かない
「恵がどう判断してどう動くか…
最悪、指一本程度なら、不測の事態が起きても、僕が行けばどうにかなるでしょ?」
絶対的な自信…最強だからこそ言える言葉だ
そして同時に、他人の不安を置き去りにすることもある
「で、紅海は一人で?」
話題が変わる
『ううん、向こう…岩手で京都勢…遊佐くん達と待ち合わせ』
その一言で、五条の思考にモヤがかかる
遊佐由布湯
その名前が紅海の唇から出るだけで十分だった
感じた事の無い違和感…引っかかり
ほんの一瞬…現実でもないのに、遊佐が紅海と仲良くする想像が濃くなる
そして…それ以上考える必要もないはずなのに、思考がそこに触れる