第22章 ブーケと夢の国
五条はすぐ反復する
「安心感?」
伊地知は慌てて続ける
「いえ、つまりですねお互いの意思確認というか……」
五条は腕を組み首をかしげる
「意思確認?」
伊地知は必死に説明する
「そのですね、お互いが同じ気持ちでいるって確認できた方が、安心する人も多いのかなと…」
その横で、七海がグラスを置いた
「合理性はあります…人間関係は曖昧になりやすい…だから言葉にする…
いわゆる、契約に近いものです」
五条は眉を上げる
「契約ねぇ…なんか重い」
少し黙ったあと、ぽつりと言う
「やっぱさぁ、好きって思うだけで十分じゃない?
だってさ別にその子と、どうこうなろうって訳じゃないし」
ストローを回す
「今までと同じ関係でいたいわけだしさ」
七海は少し黙った
その沈黙の間に、伊地知が小さく口を開いた
「でも……」
五条の視線が向く
伊地知は少し言いにくそうに続ける。
「流鏑馬さんは、どう思うかですよね……」
その瞬間…五条のうるさい動きがが止まった
伊地知は続ける
「まぁ、その…流鏑馬さんの気持ちが誰を思ってるかとかは、僕には分かりませんけど」
五条は不満そうな顔でゆっくり伊地知を見る
「伊地知…僕さ、いつ紅海の話した?」
伊地知の背筋が固まる
「……え」
五条は淡々と言う
「してないよね?」
伊地知の顔から血の気が引いた
しまったーーっ!勝手に、流鏑馬さん前提だと思い込んでた!
確かに、五条さんは一言も流鏑馬さんを思ってるとか言ってない!
五条さん的には内緒にしておきたかったのでは!?
伊地知は慌てて手を振る。
「い、いえ!違います!流鏑馬さんが、とかではなくてですね!」
しょうがなく七海が伊地知のフォローに入る
「仮に…相手に想いを伝えなければ
いつの間にか、他の男性が想いを伝えるという儀式を済ませて、お付き合いという言葉で縛られてしまう」
指でテーブルをなぞり、最後にバツのマークを描く
伊地知がナイスフォロー!とばかりに
「そ、そうです!そう言う事が言いたかったんです!」
七海はグラスを置いて、五条に視線を向ける
「あなたの言葉を借りれば…そういう事になります」
その言い方は、少しだけ皮肉だった
五条は黙る
七海に言われた事が悔しかった訳ではない
矛盾した自分の気持ちが解らなかったからだ