• テキストサイズ

それでも、胸に灯るもの 〜若かった君へ、今の私から 〜

第2章 若かった君へ今の私から


駅のホームに、夜の風が流れ込む。
発車を告げるアナウンスが、遠くで滲んだ。
私はベンチに腰を下ろし、
膝の上で、手をそっと重ねる。
もう、何も起こらない。
連絡先を聞くことも、
追いかけることも、
名前を呼ぶことさえない。
それなのに、
胸の奥は、不思議と静かだった。
若かった君の笑顔が、
記憶の中で、ゆっくりと瞬く。
あの頃の私は、
何も知らず、ただ一生懸命だった。
恋は、叶わなくても、
ちゃんと存在していた。
それだけで、十分だったのだと思う。
電車が滑り込む音がして、
光が一瞬、視界を白くする。
立ち上がって、
一歩、踏み出す。
振り返らない。
それが、最後のやさしさだと知っているから。
扉が閉まり、
窓に映った自分の顔は、
泣いていなかった。
ただ、
少しだけ、大人になっていた。
夜の街が、後ろへ流れていく。
その中に、
君の姿は、もうない。
それでも、
心の奥で、確かに灯るものがある。
名前のつかない、
あたたかい光。
それが消えない限り、
私は大丈夫だ。
――好きだった。
それだけを残して、
電車は静かに走り出す。
/ 4ページ  
エモアイコン:泣けたエモアイコン:キュンとしたエモアイコン:エロかったエモアイコン:驚いたエモアイコン:なごんだエモアイコン:素敵!エモアイコン:面白い
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp