それでも、胸に灯るもの 〜若かった君へ、今の私から 〜
第2章 若かった君へ今の私から
君と別れてから、
私はしばらくその場を動けなかった。
足元に落ちた水たまりが、
街の灯りを揺らしている。
触れれば壊れてしまいそうで、
ただ見つめることしかできなかった。
胸の奥に残ったのは、
苦しさよりも、あたたかさだった。
――ああ、私は今でも、君が好きなんだ。
声に出せば、
現実が崩れてしまいそうで、
その言葉は心の中にしまったまま。
若かった君に向けた想いは、
時間と一緒に形を変えて、
それでも消えずに、ここにある。
君の笑い方。
歩く速さ。
言葉を選ぶ時の、少しの間。
どれも、もう戻らないのに、
思い出すたび、胸がやさしく痛む。
帰り道、
ふいに夜風が吹いて、
髪が揺れた。
その瞬間、
君が隣にいないことを、
はっきりと知る。
それでも私は、
立ち止まらなかった。
好きだった、という事実だけで、
十分だったから。
叶わなかった恋も、
言えなかった言葉も、
全部まとめて、
私の一部になった。
夜空を見上げる。
星は少なくて、
でも確かに、そこにある。
――さよなら、じゃない。
――ありがとう、でもない。
ただ、
好きだった。
その想いが、
静かな余韻となって、
今日も私を前へ進ませる。