それでも、胸に灯るもの 〜若かった君へ、今の私から 〜
第1章 それでも胸に灯るもの
あの頃の君は、何も知らない顔で笑っていた。
未来の重さも、失う痛みも、まだ言葉にならないまま。
放課後の帰り道、
夕焼けが世界をやさしく包んで、
それだけで幸せだと思えていた。
君はよく、何気ない話をした。
夢のこと、好きな音楽のこと、
「大人になったらさ」と、少し背伸びした声で。
私はその横顔を見ながら、
今が永遠だと、どこかで信じていた。
でも時間は残酷で、
気づかないふりをしても、
私たちは確実に前へ押し流されていった。
最後の日、
君は変わらず笑って「元気でね」と言った。
その声が少し震えていたことに、
私は気づかないふりをした。
本当は、伝えたい言葉があった。
でも若かった私は、
想いを言葉にする勇気を持っていなかった。
それでも、
君がくれた時間は、ちゃんと心に残っている。
今、こうして思い出す君は、
少し不器用で、少し無防備で、
そして誰よりもまっすぐだった。
若かった君へ。
あの頃の私は、確かに君に恋をしていた。
言えなかったけれど、
消えなかった。
もしもう一度会えるなら、
あの時より少し大人になった私は、
ちゃんと伝えるだろう。
――ありがとう、と。
――大切だったよ、と。
若かった君にのせた想いは、
今も胸の奥で、静かに息をしている。